HOMEご挨拶

ご挨拶

石井 秀樹

ごあいさつ

群馬大学大学院医学系研究科内科学講座循環器内科学のホームページへようこそ。大学ですので、教育や研究に加え、群馬大学医学部附属病院での診療のみならず、県内の病院・診療所と協力しながら、群馬県の循環器診療に貢献すべく頑張っております。

群馬大学医学部附属病院では、多くの科において様々な疾患を治療し、特に併存症の多い患者さんも多くお越しになられます。また、救急外来は年間8000名を超える実績(救急車搬送患者は全体の約4割)があり、患者数・救急車受け入れ台数とも42国立大学附属病院平均を大きく上回り、地域医療にも大きな貢献をしているところです。

2020年以降、群馬大学医学部附属病院ではCOVID-19患者さんを多く受け入れました。その中でも重症患者さんにはECMOを使用します。このような症例については我々循環器内科、そして外科を中心として管理した実績があり、通常の脳卒中・循環器診療との両立を行ってまいりました。

ご承知おきのように、COVID-19罹患患者さんの重症化率は低下してまいりました。その一方、2020年以降の死因別死亡数に様々な変化がみとめられております。例えば、2020年と比較し、2021年にはわが国では誤嚥性以外の肺炎で亡くなる方は5000人以上減少しておりますが、脳卒中と心疾患で亡くなる方は各々1617人、9114人増加しております。糖尿病や血圧のコントロールについては、COVID-19 pandemic禍においてかなり悪化しているとの検討結果や、運動量が減ったことも報告されています。高齢化に加えて、生活習慣が悪くなることは動脈硬化性疾患や心臓病を悪化させる因子ですので、循環器系疾患がこれからも増加する可能性は極めて高いと考えられております。

2023年3月に発表されました、我が国のがん患者さん10年生存率は全体で53.3%でした。一方、心不全の5年生存率は約50%といわれております。がんよりも、心不全の方が長生きできないということを意外に思われる方も多いかと思いますが、これは実際のデータに基づいているお話です。心不全患者さんは120万人いるといわれており、まさに「心不全パンデミック」です。また、世界的にみると、心筋梗塞などの虚血性心疾患が死因別死亡者数の最多となっています。群馬県に目を向けてみますと、2020年の死因別死亡者数は、循環器系疾患による死亡者数6432名、悪性新生物5950名でしたが、2021年では各々6875名、5993名と差が開いてきております。県民の方に、心臓病、動脈硬化についての早期発見の意義と、予防の重要性について、群馬県や県医師会、前橋市医師会、群馬心不全地域連携協議会、そして県内病院・医院の先生方と協力しながら訴えていきたいと思っております。

2019年12月より施行されております「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(いわゆる「脳卒中・循環器病対策基本法」)に基づき、ぐんま循環器病対策シームレス・プロジェクト(群馬県循環器病対策推進計画)が策定され、実行されております。こちらは2024年度に改定予定となっております。先に述べた事情も勘案しながら、こちらの計画立案に関しては、当科もお役に立ちたいと思っております。そして、群馬県の健康寿命延伸に貢献する所存です。

群馬県では、医師不足が相当深刻な状況となっております。厚労省が2021年に発表した2036年の予測では、群馬県では必要な医師数に対して34.5%不足する可能性が示唆され、福島、岩手、青森についてワースト4位です。更に、循環器内科に携わる医師の高齢化も深刻です。益々増える心・血管系疾患の治療そして、その病態機序に迫る研究を行う循環器内科分野の魅力についても積極的に若い先生にPRいたします。

何卒ご指導ご鞭撻のほどお願いいたします。