先輩医師からのメッセージ
風向きが変わったのは初期研修で、県内の市中病院で循環器内科をローテーションした際です。循環器内科医のアグレッシブさ、あきらめない姿勢、急変時や救急外来で常に冷静で心強い医師像に強い憧れを抱きました。また、循環器内科の臨床は欲張りです。内科でありながら急性期の患者さんには侵襲的治療の選択肢を持ちます。急性心筋梗塞に対する緊急でカテーテル治療はその代表格です。また、心不全や不整脈であれば呼吸器や薬剤、ペースメーカなどを用いて一刻を争う急性期から救います。その後、退院に至るまでの治療は、心エコーをはじめとする画像モダリティを用いて血行動態や心筋の状態を把握し、心保護薬の管理や高血圧、糖尿病、脂質異常症などのリスクファクターの管理といった内科的側面も多岐にわたり、退院に向けた心臓リハビリテーションなども行い、退院後は長期にわたるフォローが必要になるケースも多いです。これは大変と捉えられるかもしれませんが、自分にとっては非常に魅力的でした。研修医の頃に自分が入院から手術まで見届けて寄り添った患者さんがリハビリテーションの途中で急変し、そのまま転科して自分のもとから離れてしまい、退院まで見届けることができず非常に残念な思いをした記憶があったからかもしれません。もちろん、循環器内科だけで治療しているわけではありませんので、併発疾患や合併症が生じた場合には他のさまざまな科の先生方にご協力頂きながら治療しているのは言うまでもありません。しかし、循環器内科の特性上、生命に直結する疾患であるが故、最後まで自分のもとで患者さんを見守ることが多いと思います。
自分はカテーテル治療を専門としておりますので、自分の職業で最も素晴らしいとアピールしたい点は急性心筋梗塞に対するカテーテル治療です。場合によっては心臓が止まりかかった(止まった)状態で救急搬送されて、数分後には途絶えていたであろう生命を、たった数ミリの傷口を介して行う治療で救うことができ、経過が良ければ数週間後には歩いて退院します。これは本当に素晴らしいことであると日々実感しています。ただ、自分が臨床をしていて最もやりがいを感じる瞬間は実はここ以外にあります。それは「退院後の初回の外来」です。もちろん、大変な治療を乗り越えた患者さんが歩いて帰る瞬間などは非常にやりがいを感じますが、そこまではある意味自己満足の側面も大いにあると考えています。その後患者さん・ご家族がご自宅で幸せな時間を取り戻せたことを報告しに来てくださる瞬間に、自分の医療に対する本当の価値を感じています。
さて、ここまでは循環器の虚血性心疾患を専門としている臨床医としての自分を中心に話をしてきました。ただ、循環器科の本当の魅力は、守備範囲の広さにあります。私のように体を動かすことが好きな者は、虚血性心疾患に対するカテーテル治療を専門とする虚血チームが向いていると思います。最近は弁膜症などのstructural heart disease(SHD)に対するカテーテル治療も進歩しておりますし、活気のある分野です。しかし、それは循環器内科のほんの一部にすぎません。例えば同じカテーテルでも、より論理的思考で心電図を解析し不整脈治療を行うカテーテルアブレーション(不整脈チーム)もあり精力的に活動を行っております。また、心エコーを専門として心不全患者さんの血行動態の把握、重症度評価を行い、治療方針の決定に携わるエコー・心不全チームや、心肺運動負荷試験(CPX)を行い心不全患者さんの病態把握や退院後の活動量の目安を提示する心臓リハビリテーションチーム、心臓CTやMRI、シンチグラフィの読影など画像を専門として循環器診療に携わる方法もあり、自分のキャラクターや興味に応じてかなりの選択肢があるといえます。また、もちろん臨床だけではなくHPご参照頂ければわかるように基礎研究も充実しております。実際にその道で御高名な諸先輩方も、循環器を志した当初やりたかった仕事と、現在生業としている仕事が良い意味で異なっているというのはよく耳にします。これは循環器内科の守備範囲の広さを物語っているのではないかと思います。
長々と説明して参りましたが、私と同じように実際には体験してみることでいろいろ見えてくるものだと思います。最終的にどの科に進むにしても、循環器内科をローテーションして頂ければ、一生役に立つ知識を得ることができると思いますし、後悔はさせません。臨床を行っているメンバーは非常に若く、活気があり、仕事のしやすい病棟だと思いますので、ぜひ私たちと一緒に仕事をしましょう。病棟でお待ちしております。